1069.名前(2022.5.9掲載)
最近、地名と人名に関して「危ない」と警鐘を鳴らす本を読んだ。 楠原佑介著「この地名が危ない(幻冬舎新書)」と、牧野恭仁著「子供の名前が危ない(ベスト新書)」である。 まず地名。古い地名には、かつて地震や津波が発生したというメッセージが込められていることがあり、安易な市町村合併で地名が消えることは危険だと楠原先生は語る。 例えば、女川や小名浜のオナ(ヲナ)は、雄(男)波。つまり津波のことであり、津波常襲地を示す地名。また、釜石は釜磯の転化で「釜状にえぐられた海岸」を意味し、鎌倉などと同様、繰り返し津波の被害に遭った来歴をその名に刻んでいる。 津波だけではない。新潟県中部地震で土砂崩壊した芋川は、芋を古語でウモと読むように「埋もれる川」というリスクを後世に伝えたかったらしい。 まさに「地名は災害の履歴書」と説く楠原先生に同感しつつ、全国の原発所在地に危ない地名が付かないことを願うばかりである。 次に子供の名前。与夢(あとむ)、虹空(にっく)、葉萌似(はーもにー)、歩論(ぽろん)、新千絵(にーちぇ)…。 これじゃまずいだろう。学校の担任が生徒の名前を読めない、小児科医が患者に声をかけられない等の問題が発生して久しいが、こうした名前を付けられた子供の犯罪傾向の高さや、うつ病の増加、社会的ステータスの低さが証明されている。 逆に、優秀なアスリートやエリート官僚の名前は、結構古典的。 名前には、その時代や親の欠乏感が反映されるらしく、戦時中は勇、武、勲など戦いにまつわる名前が増え、家族が孤立した経済成長期には愛が付く名前が増えた。 とすると、奇天烈な名前が増えた背景には、アピールする個性のない親たちの「目立ちたがり願望」があるのかもしれない。ただ、その子の前途は多難。 たとえ艱難辛苦を乗り越えて出世したとしても、天使(えんじぇる)社長の訓示には重みがないし、未仁(みにー)先生の論文は信憑性が薄くなってしまう。 名は体をあらわすのだから、地名も人名も危ない名前は回避せねばならないと思うのである。
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