1074.裕次郎さんと堀江さん(2022.6.13掲載)
世界最高齢でヨットでの単独無寄港太平洋横断を成功させた83歳の堀江謙一さんをたたえ、日活映画「太平洋ひとりぼっち(1963年)」を観た。 1962年に太平洋単独航海を成功させた、若き日の堀江さんをモデルにした映画である。 堀江さん役は、ヨットが似合う29歳の石原裕次郎。 映画の中で、裕次郎さんが備蓄の食糧を利用して洋上でショートケーキもどきを作るシーンが印象的だった。砂糖、バター、クリープをマグカップの中で混ぜた後、スプーンですくって食べ「本物のショートケーキが食べたい」とひとりごつのだ。 この「もどき」、けっこう本物の配合に近い。 当時全盛だったバタークリームのショートケーキなら、足りないのはスポンジ部分の小麦粉と卵ぐらいだ。胸焼けしそうなバターが、裕次郎さんの熱いイメージにぴったりの名シーンなのである。 ところで、ショートケーキの「ショート」は、固形油脂であるショートニングに由来するということをご存知だろうか。発祥であるアメリカのショートケーキはスポンジ部分がビスケットであり、このビスケットにショートニングが練り込まれている。 大正時代に日本に伝搬した元祖ショートケーキは菓子メーカー不二家の手で日本風にアレンジされ、スポンジタイプで世に広まったのだ。 映画のラストで、サンフランシスコに着いた堀江さん役の裕次郎さんが、保護された大使館員の自宅で入浴して100日の疲れを取るシーンがある。 風呂上がりにショートケーキをおねだりしたら、サクサクビスケットのアメリカンタイプが出てきてびっくり、なんて架空のシーンを想像してしまった。 ヨットもアメリカもショートニングもショートケーキもぴったりはまる、裕次郎さんと堀江さんなのである。
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