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プロ野球中継で、降板した投手がアイシングで肩を冷やすシーンを見る度、かつての高校球児に思いを馳せて胸が痛くなる。「肩を冷やすな」という昭和の指導は何だったんだ。 さまざまな分野で、常識とされてきた考え方が覆ることがある。 例えば卵とコレステロール。1個あたり約215mgとコレステロール含量の高い鶏卵は、古くから心筋梗塞の敵とされてきた。 しかし、厚労省が3万3千人を対象に調査した結果では、卵の摂取頻度と血清総コレステロール値との間に相関はなく、心筋梗塞発症リスクも変化がなかったのだ。 このデータが紹介されていた日経メディカル誌で、医師が患者に対して行う生活指導の常識が訂正されていた。 禁煙指導の常識「タバコは徐々に本数を減らしましょう」→新常識「禁煙するなら一気にやめる」。 本数を減らしたり、ニコチン含量の少ない銘柄に変えたりしても無意味。やっと吸えた1本を深く根元まで吸うため、ニコチン摂取量は変わらない。また、喫煙間隔が長くなると次に吸った時の快感がより大きく感じられ、禁煙する意欲がそがれてしまうのだ。やめる時は一気にやめるしかない。 高血圧患者への減塩指導の常識「塩分摂取量は1日6g未満」→新常識「塩分1日8g未満+カリウム、カルシウム摂取」。 日本人の平均塩分摂取量は1日約11g。味噌ラーメン1杯に約6gの塩分が含まれるのだから、日本の食事情で1日摂取量6g未満は不可能に近い。 献立を洋風にすれば可能かもしれないが、コレステロールやカロリーが増えるという別のリスクが発生してしまう。とりあえず8g未満を目指し、カリウムやカルシウム摂取でナトリウムの排泄を促進するのだ。 タバコは吸わないが、何にでもたっぷり醤油をかけて塩分を摂りすぎてしまう小生の夕餉は卵かけご飯。茶碗に盛られた白飯の先端に穴をあけ、醤油を加えた溶き卵を投入。コレステロールの憂いなく頬張った。 しかし、隣席の後輩は茶碗の底に卵を落とし、その上に白飯をのせていた。 幼時からの食習慣が、食卓の常識ではないことを学んだ夜であった。
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