211.花の色(2005.3.23掲載)
サントリーが青いバラの開発に成功し、研究チームのリーダーである田中良和氏の論文を多くの専門誌で目にするようになった。1990年の研究着手から15年。パンジーの青色遺伝子をバラに導入し、見事青い花を咲かせたのだ。 バラの市場規模は全世界で4000億円。2007年以降に予定されている青いバラの発売は確実にバラ市場を活性化し、「不可能、できない相談」という「blue rose」の辞書上の意味を書き換えるに違いない。 そんな、ものづくりにこだわるサントリーが昨夏、15年ならぬ15分で開発したかもしれない青い食品を発売した。限定商品「ペプシブルー」。青色1号と赤色102号という合成着色料を使用した真っ青なペプシコーラなのだ。添加物に頼った一見安直な開発だが、ブルーローズの研究ストレスをペプシコーラで息抜きしたのだとしたら、その気持ちはよくわかる。商品開発には、こんなポップなバランス感覚も必要なのだ。 ところでこのペプシブルー、青い食品は売れないというセオリー通りかなり不評だった。本当にきれいな青なのだが、なぜか食欲は湧かず、のどの渇きも止まってしまう。やはり食品は暖色系か。 そこで暖色系食品の代表として、花かつおの登場。いま、青いバラに負けじとピンクの花かつおを作る研究が進んでいる。 花かつおの色はカツオを煙でいぶす際、煙の中の一酸化炭素とカツオの筋肉中に存在するミオグロビンという物質が結合して作られる。通常はほんのり薄紅色だが、一酸化炭素濃度を上げることでピンクの花を咲かせるはずだ。 実験進行中のピンクボニート、ペプシブルーの二の舞にならないよう、消費者に受け容れられる色を目指す改良の日々。 花の色は、いろいろな分野で競争のただ中にある。
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