464.菩薩さま(2010.4.5掲載)
時々、フィギアスケートの浅田真央選手が菩薩さまに見えてきて、競技の結 果に関わらず、その存在をありがたく感じることがある。 同じような感覚で朝青龍関が仁王さまに見えたり、細木数子先生が大仏さま に見えたりもする。極めた人には御仏が乗り移るのか、はたまたこの3人が仏 界の化身なのか、とにかく不思議な安心感がある。 日本人はこういう身を委ねたくなるような、ありがたい安心感に弱い。 この感覚をクルマのデザインに生かしてヒットしたのが、1988年発売の 初代日産シーマ。バブルの象徴的高級車は、鎌倉大仏の安心感が基本コンセプ トだった。 日本人は大仏さまの巨大な膝の安定感に、心底安らぎを感じる。そこで、膝 のカーブを徹底的に解析して、シーマの曲線美に反映させたのだ。なるほど、 高級車=安心感という切り口を日本人の宗教観に落とし込んだ開発者のセンス はすごい。 ならば、菩薩さまの安心感を食品パッケージの曲線に生かしてはどうか。 食品の世界で曲線美といえば、やはりコカ・コーラの「コンツアーボトル」 である。「曲線の傑作」という二つ名を持つこのボトルが世に出たのは191 6年、日本上陸は1956年。開発コンセプトは「暗闇で触ったときにもそれ がコカ・コーラのボトルとわかるもの」。そして、モデルはココア豆。菩薩さ まじゃないな。 ならば、1961年に栄久庵憲司氏のデザインで世に出たキッコーマンの醤 油ボトルはどうか。モデルは不明だが、あのどっしりとした安定感とふくらみ のある曲線。もしかして菩薩さまかな。 食品の安全安心が不条理なほど過剰に叫ばれる昨今、菩薩さまの安心感にお すがりするパッケージデザインは正しい選択だと思う。 もちろん、シーマがそうだったように、菩薩さまの力をお借りするからには 真の安全安心を追求した覚悟ある中身にしなければならない。 浅田菩薩を見るたびに、そんなことを考えてしまうのである。 ================================================================ 日産シーマ情報の出典は、日下公人著「食卓からの経済学」です。
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