502.白い巨塔的医師不足(2011.1.10掲載)
医師不足が叫ばれて久しい。 厚生労働省の調査によると、診療に従事している医師の数は2006年末で約26万6000人。人口1000人あたり2.1人の割合である。これは、先進29ヶ国中26位の低水準。1位のギリシャだと1000人あたり5.4人にもなる。 逆に日本の病院ベッド数はトップであり、1000人あたり14床。ギリシャはかなり少なく4.8床。やはり、日本の医師は1人が抱える入院患者数も多くて大変ということになる。 そこで、厚労省は医学部の入学定員を現在の46大学8486人から、将来的には12000人に増やすべきだと提言しているのだ。 そもそも、若人が医学部を志望する動機は何なのだろう。 現在の医学部生の約半数が親も医師であることを考えると世襲的要因が上位に来ることは否めないが、映画やテレビに登場する医師像に惹かれて…、という動機も大いにあるはず。 そこで、日経メディカル2010年増刊号が選んだ日本の医療映画10本を紹介する。 「赤ひげ」「海と毒薬」「本日休診」「白い巨塔」「ヒポクラテスたち」「大病人」「命」「阿弥陀堂だより」「感染列島」「デイア・ドクター」 医療雑誌の厳選作品だけにどれも秀逸だが、やはり「白い巨塔」だろう。 1966年公開の白黒作品ながら、田宮二郎演じる財前五郎がキレにキレていた。その後、1978年6月からスタートしたテレビ版も凄かった。小生の同級生2人がテレビ版の田宮財前に感動して医学部を目指し、別の1人がなぜか役者を志した。正統派の2人は医師になったが、アウトローの1人は消息不明。 結局、同級生6人が医師として活躍しているが、勤務先は全て県庁所在地の市内中心部。そして、激務といわれる産科、小児科、救命救急医はゼロ。医師不足ではなく、医師の偏在化が問題なのだ。 財前教授に憧れた医師がへき地医療を目指すはずもなく、将来のためには「赤ひげ」のテレビ版を復活させるしかないと思うのである。 ================================================================ 医師数情報の出典は、読売新聞2009年7月12日付朝刊です。
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