1013.キレないヤンキー(2021.3.29掲載)
巷でヤンキーを見なくなって久しい。 街はすっかりオシャレになり、パンチパーマとジャージで闊歩できた時代が信じられないくらい、若者たちは小ぎれいになった。 しかし、そのせいで善と悪の見分けがつかなくなった。パンチパーマは悪のランドマーク。水原弘や大村崑のホーロー看板が田舎のマーカーであるように、人はヤンキー密度で街の空気を読み、身を守る道を選んだ。 いまは真面目顔が凶悪犯罪を起こす時代。こわい時代。 地方都市におけるパンチパーマの減少傾向は、昭和50年代半ばに端を発する。近藤真彦氏がマッチカット(ゆるいウェーブで前髪半分を額に垂らす)なる髪型を流行らせ、ヤンキーたちもこぞって真似た。結果、パンチパーマが恥ずかしくなり、自然、ヤンキーの気配が消えた。 ヤンキー不遇の時代である。 ヤンキーは恐い、ヤンキーは吠える、ヤンキーはキレる。 げと、ヤンキーが恐いのは小心者であることの裏返しであり、根はすごく優しい。ヤンキーが吠えるのは動物だからであり、動物だと思えばとてもかわいい。ヤンキーがキレるのはカルシウムが足りないからであり、おふくろの味に飢えていると思えばかなりいとおしい。 そう、ヤンキーにはおふくろ定食が必要なんだ。特にだしの効いたやつ。 ある研究機関の実験でラットにだしの効いたエサを与えたところ、同じケージに入れた他のラットを攻撃する回数が減ったというデータがある。だしの効いてないエサを食べたラットは暴れていたのに。 これは、小腸に旨味を感じる器官があって、グルタミン酸やイノシン酸などのだしの旨味成分を感じて情緒が安定し、穏やかな性格になるから。自己主張が下手でディベートに弱いといわれる日本人、ずっとだしを飲んできたから温厚なんだ。 ヤンキーだろうがヒッキーだろうが、だしの効いたおふくろの味噌汁でキレない若者が増えることを願うばかりである。
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