1015.漬物の音(2021.4.12掲載)
映画やテレビドラマで登場人物が食事をするシーンを見ると、無性に同じものが食べたくなる。 「新・座頭市物語」で、座頭市がごはんに味噌汁をぶっかけてしゃぶしゃぶ食べるシーン。1976年頃、フジテレビで放映された座頭市テレビシリーズの大ファンだった私は味噌汁ごはんにハマり、食卓の不評を買いながらも勝新さんにファンレターを書いた。 「渡る世間は鬼ばかり」で岡倉大吉がつくる創作料理もおいしそうだった。「おかくら」も「幸楽」も従業員が過剰気味で固定費が高そうなのが気になるが、繁盛しているだけにちょっとつまんでみたい。 そして、映画「たそがれ清兵衛」にもそんなシーンはあった。 主人公清兵衛(真田広之)が御飯を食べ終える場面。茶碗に付いた米粒を囲炉裏の湯で流し込んだ後、たくあんで茶碗の表面をきれいにしてそれをポリポリ食べるのだ。 茶碗は水洗いなどせずそのまま自分の食器入れに。循環型社会のお手本である江戸時代の節水術に感心しながら、どうしてもたくあんが食べたくなりコンビニで「かつおたくあん」を購入。映画の余韻に目頭を熱くしつつ、たくあんをポリポリやって1日1店舗3個が合格ラインというコンビニの漬物売上に貢献した。 ところで、漬物は塩分が高くヘルシーじゃないと敬遠されがちだが、どっこいミネラルの多い野菜漬物は思ったほどナトリウム摂取のリスクは高くない。本当に悪ければキムチを食べまくる韓国人がみんな高血圧で倒れてしまう。 さらに、かつお節をふりかけるともっといい。かつお節に多く含まれるカリウムがナトリウムの弊害を和らげてくれるのだ。 こんな講釈はさておき、やっぱり食欲アピール王は漬物だと思う。 画面を通して聞こえてくるポリポリたくあんの音。懐石料理の最後にお茶漬けと一緒に食べるセリセリ壬生菜の音。新幹線で隣人が食べる幕の内弁当のパリパリしば漬けの音。 減少傾向ながら3500億円にも上る漬物市場は、こんなサウンドに支えられているのだと思った。
\\\\
|
column menu
|