1016.離れて見てみる(2021.4.19掲載)
知り合いの医療関係者が「いま開業して儲かるのは眼科と皮膚科」だと語っていた。特に眼科は、花粉症と近眼の激増と老眼の低年齢化で患者数も増加の一途らしい。 近眼と老眼低年齢化の原因は、パソコン、スマホ、ゲーム機などの画面を至近距離で凝視することによる眼精疲労で間違いない。「テレビは離れて見なさい」という昔日の常套句がむなしく聞こえるほど、現代人は液晶を凝視し続けている。 物心ついた時から液晶画面を近くで見てきた今の小学生にとって、「離れて見ろ」という指示は、ダイヤル式黒電話の使い方がわからないのと同じくらい、理解不能なことなのかもしれない。 しかし、離れて見ることは目にとってかなり重要である。 太平洋戦争中、零戦のパイロットとして64機の敵機を撃墜し「撃墜王」と称された坂井三郎さんは、毎日遠くの看板の文字を見る訓練を続け、視力2.5を獲得した。レーダーのない時代、誰よりも早く敵機を発見し、太陽を背にして先制攻撃をかけると負けることはなかったという。 また、魚群探知機が発達するまでは、遠洋漁業船でマストの上部に立ち、遠方の魚影を見つける「物見」に高給が支払われた。いつも遠くの海や島を見て糧を稼ぐ視力を鍛えた。 ちなみに、6.0の視力で遠方の猛獣から身を守ったオスマン・サンコンさんは、「ギニアではさえぎるものがないから、遠くを見るのが日常だ」と語っていた。 目の健康にアントシアニンやビタミンAが必要であることは当然であるが、それ以上に遠くを見ること、離れて見ることが重要なのだ。 近すぎると見えないことが、離れて見てみるとよくわかる。 世の中のこと、組織のこと、相手のこと…。 とりあえず、離れて見てみよう。
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