1033.ワラはすごい(2021.8.23掲載)
先日、歯科医院の掲示板で気になる標語を見つけた。 「卑弥呼の歯がいーぜ」 この標語には、よく噛んで食べることの効用が次のように込められており、日本咀嚼学会が1990年に考案したらしい。 ひ…肥満防止、み…味覚の発達、こ…言葉の発音がはっきりする、の…脳の発達、は…歯の病気予防、が…ガンの予防、い…胃腸快調、ぜ…全力投球。 最後の「全力投球」が体育会系っぽくていいが、なぜ卑弥呼なのかというと、卑弥呼の生きた弥生時代の食事は硬いものが多く、一回の食事で3990回も噛んでいたらしい。 たくさん噛むから食事時間が長く、51分。対して、現代人の平均咀嚼回数は620回で、食事時間11分。噛まないから現代人はあごの線が細い。ちなみに、戦前でも1420回の咀嚼回数だったから、食事は急激にやわらかくなった。 弥生時代の食事というと、すぐに稲作を連想しがちだが、咀嚼回数という切り口もおもしろいな。 さらに広げて、稲作文化をワラの文化として考察してみた。 縄文末期から弥生初期にかけて稲の収穫器具は石包丁だったが、石包丁は稲の穂を摘み取る収穫用だから、ワラを利用できない。それが、弥生末期から古墳時代にかけて石鎌で稲を根元から切り取るようになり、ワラが利用できた。 そして、ワラは日本の衣食住に定着した。 衣…草鞋、藁帽子、蓑、藁布団、筵。食…米俵、藁納豆、糠団子、藁束子。住…畳床、藁葺き屋根、注連縄。おまけ…藁馬、藁人形。 すべて今もあるものばかり。そして、ワラは土から生まれて土に帰るエコ素材。SDGS時代を迎えて一気に主役に躍り出るかもしれない。 ワ…和の素材、ラ…ライフスタイル全般、は…廃物利用、す…捨てるとこなし、ご…ごはんのおかげ、い…囲炉裏が似合う。 ワラはすごい、のである。
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