1034.理科研究の納豆(2021.8.30掲載)
納豆は、夏休みの理科研究ネタになることが多い。 比較的簡単に試作できるし、大豆以外の豆類やトウモロコシなんかを培地にして納豆菌を繁殖させたりする応用も可能。 試食には勇気がいるが、簡単な実験で食文化と発酵学が学べる格好の素材といえる。 ただし、理科研究コンテストに入賞するとなるとハードルはかなり上がる。 筆者が考える理科研究入賞3要素は、「子供目線の気づき」「実験方法の工夫」「コツコツ根気よく観察」であるが、これを納豆に当てはめるとどうだろう。 発酵工程を炊飯器やこたつで実施するという工夫や、納豆菌の繁殖状態を1時間ごとにスケッチするという根気。大豆を粉砕すると発酵は促進されるのかという子供目線の疑問を反映させる手もある。 こんな理科研究パッケージを親戚の小学生に押し付けてやろうと思っていた矢先、素晴らしい気づきで実験を企画した「オトナの納豆研究」に出会った。 京都大学の橋本教授は、「生きている大豆で納豆はできるか」という夏休みの理科研究っぽいテーマを掘り下げ、生命体の大豆で納豆はできないという結論を導いたのだ。 このテーマ設定の発想力はすごい。 通常の納豆製造で使用する蒸した大豆を「死んだ大豆」、吸水させると発芽してもやしになる大豆を「生きている大豆」と捉える着眼に感心した。 生きている大豆は当然ながら外敵となる納豆菌の繁殖に抵抗するから、うまく発酵できず納豆にならない。 当然といえば当然だが、これまで誰も検証していなかった。 もちろん、学術的にはさまざまな条件設定と精緻な大豆処理が行われて学会発表となったのだが、ポイントは「死んだ大豆」という発想。 今度、「死んだかつお節」と「生きているかつお節」を設定して、かつお節かびによる発酵の実験をしようと思うのである。
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