1078.アメリケン(2022.7.11掲載)
先日、職場の若手社員と話していて「メリケン粉」という単語が通じず、うろたえてしまった。 「スーパーでメリケン粉買ってきてくれない」 「メリケン粉って何っすか?」 「メリケン粉はメリケン粉だろ。メリケン波止場のメリケンだよ」 「メリケン波止場って何っすか?」 「メリケン波止場っていやぁ、赤い靴の女の子が異人さんに連れて行かれた港だよ」 「異人さんってひいじいさんっすか?」 話にならないので、説教ついでに外来語の来歴をレクチャーした。 「その昔、アメリカンが日本語的に発音されてメリケン。つまり、メリケン粉は米国産の小麦粉のことを指していた。同様の活用形に、ホワイトシャツ→ワイシャツがある。ちなみに、カッターシャツはミズノの商品名で『勝った〜』が語源」 …けむたがられた。 それにしても、メリケン粉が通じないのは時代のせいか。 かつて、どの家庭にも常備されていた日清製粉ウェルナの薄力粉「フラワー」。 紙製のパッケージに描かれたオレンジ色のひまわりは、家庭料理の象徴として台所に明るく咲いていた。 天ぷら、ドーナツ、ホットケーキ。ごちそうの傍らにはいつも「フラワー」があった。 日清製粉ウェルナが「フラワー」を発売したのは、昭和30年(当時は日清製粉)。量り売りが普通だった小麦粉を個包装した画期的商品は、瞬く間に家庭に浸透していった。 その「フラワー」の開発コンセプトが、「メリケン粉(輸入小麦粉)に負けない小麦粉をつくる」だったのだ。 高度経済成長期の息吹が伝わってくる「メリケン粉」という響き。舶来品を目指して精進した意気を忘れないためにも、死語にしてはならないのである。
\\\\
|
column menu
|