1079.キレない社会(2022.7.18掲載)
以前、新聞で「『反抗』にあこがれぬ若者」という特集記事を読んだことがある。イケメンの優等生を同世代の男子が応援する最近の傾向が不思議だという内容だった。 たしかに、女性や親たちがほめるのはよく分かるが、ヤンキー男子の口から「同世代の誇り」的な賞賛コメントが出ることには違和感をおぼえる。 「かつて若者、特に男子は、既存の価値観を壊す同世代人を支持したのではなかったか」という一文に、迷わず合点した。 思えば高校の文化祭、ライブで人だかりができたのは「生徒手帳なんか破っちまえ」と青い絶叫で拳を上げるロッカーであって、おしゃれで歌のうまいデュオではなかった。 父親世代は「太陽族」や「カミナリ族」、兄貴世代は「全共闘」、そして自身は「竹の子族」や「尾崎豊」。反抗や反体制が生の証だった世代と、現世代との違いは一体何なのか。 精神科医の香山リカ氏は記事の中で、「教師や父親が優しくなり、彼らには脅威ではなくなった」「大人は自分のために何か協力してくれる存在。ならば、それを利用しない手はない。尾崎みたいに生きるのは損だと考える」と解説する。 ならば軟弱ついでに、キレない若者を育成したい。 キレないためにはだしの効いた味噌汁を飲めばいい。ラットの実験で、エサにだしを効かせると、狭いケージの中で密集して飼育してもラットどうしがケンカしなかったのだ。 だしでほっこりして反抗せず、キレない若者。 物わかりのいい社会にどれほどのパワーが潜んでいるのか。負のパワーを経済成長に昇華させた反骨世代が、興味津々で見守っているのである。
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