1083.さつまのメリット(2022.8.15掲載)
仕事でよく鹿児島を訪れるが、ここは地の利を活かすのが本当にうまい。 地の利ベスト3は、「本州最南端」「シラス台地」「遠い」。いや、ワーストと呼ぶべきかもしれないこれらの環境を見事に活用しているのが鹿児島なのだ。 「本州最南端」 1609年、薩摩藩は琉球を服属させた。そして琉球を通じて中国と交易し、その富で56万石から77万石に加増。江戸幕府は石高以上に中国の最新技術が薩摩に伝わることを恐れたが、最南端の地の利だけはどうしようもなかった。 1970年、大隅半島の内之浦宇宙空間観測所から、我が国初の人工衛星おおすみが打ち上げられた。遠心力の関係で、ロケットの発射は赤道に近いほど有利。もちろん、南方戦線に近いという理由で特攻基地が設置された知覧の若者たちのことも、忘れてはならない。 「シラス台地」 たしか小学校の社会科の授業で、シラス台地は芋しかできない貧しい土地と習った記憶があるが、今はそうでもない。ある時はあたり一面「知覧茶」の緑、またある時は焼酎用の芋「黄金千貫」、そして最近のブームは「そら豆」。シラス台地は変化に対応できる「カセグ台地」に進化したのだ。 シラス台地の新たな活用法として、株式会社ストーンワークスはシラスを圧着した「シラスブロック」を考案し、これに芝生を根付かせた芝生緑化基盤を発売した。芝生が抜けにくく保水性が高いことから、屋上緑化や路面電車の軌道内緑化に活用されている。 「遠い」 薩摩藩は関ヶ原で西軍についた外様大名であるが、江戸からあまりに遠いからか、統治はそのまま島津家となり領地も安堵された。東京本社の幹部が鹿児島転勤をいやがり、現地採用の支店長に運営を任せたという感じかもしれない。 そして、任せた後は監査である。江戸幕府もたびたび隠密を送り込むが、なかなかうまくいかない。薩摩弁も含め、いろいろな点で江戸から遠いことが原因だったに違いない。 薩摩人の逆境をチャンスに変える力が維新の風を起こした。 鹿児島に行くと、そんな気概を肌で感じることができるのである。
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