1084.50代の食卓(2022.8.29掲載)
スーパーの食料品売場で買い物客のかごの中身を一日ながめていると、ある法則の存在に気づく。 それは、若い主婦のかごの中身を見ると夕食メニューを想像できるが、高齢者のかごは夕餉の食卓が推測不能、という法則である。 若い主婦のかごにあるのは、カレールー、麻婆豆腐の素、焼肉のタレなど、メニュー限定の加工食品とその食材。対して、高齢者のかごは加工食品が少なく、冷蔵庫の残り物なんかもイメージしながら買っているから、何を作ろうとしているのかさっぱりわからない。 この両者の境界線が40代にあるのではないかというデータがある。 ある調査会社が行った家庭での食材出現率調査によると、40代と50代の食材使用実態に大きな開きがある。 内食で醤油を使う比率…50代34%、40代25%、30代24%、20代24%。 内食で鮮魚を調理する比率…50代28%、40代20%、30代16%、20代15%。 揚げ物を惣菜・弁当で済ませる比率…50代27%、40代40%、30代42%、20代45%。 40代以下がひとかたまりのデータで、50代のデータだけが突出している。 「主婦が夜の献立を考えるとき、かつては『何を作ろうか』から始まった。いまは『何を食べようか』がスタート地点。次に、食べたいものをどうやって調達するかに進む」らしい。 ファミレス、ファストフード、大型量販店が生まれ、食品業界が変わりはじめた70年代に多感な幼少期を過ごした50代。ちゃぶ台からテーブルへの食卓移行を経験した50代。町内の「かどみせ」衰退を目の当たりにした50代。行商の魚屋さんが廃業した日のことが忘れられない50代。 何を作ろうか世代の矜持を、買い物かごで見せつける50代なのである。
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