1093.短所は長所(2022.10.31掲載)
来年度入社の就職活動がひと段落した。 学生さんの人生を左右する瞬間だけに面接には真剣に立ち向かっているが、今年も教科書的回答にがっかりすることが多かった。 特に「あなたの短所は何ですか?」と短所を尋ねる質問の回答がパターン化していてつまらない。 「集中するとまわりが見えなくなることです」…短所を述べつつ自分には集中力があるということを伝える優等生回答。 「責任感が強すぎで物事を抱え込んでしまうことです」…責任感の強さをアピールする別バージョン。 「忘れっぽいのでメモを取るようにしています」…短所の解決策を抱き合わせるオプション。 とはいえ、本当の短所を正直に答えてしまうとマイナスポイントとなることもあり駆け引きは微妙だが、面接官とコミュニケーションが取れれば大きな失点にはならないと思う。 加工食品にも短所を長所にするセールストークがある。 日持ちのしない商品は、賞味期間の短さを生鮮食品的鮮度感に置き換え、「フレッシュだからお早めにお召し上がりください」。 色あせ、色変わりする商品は天然感をアピールし、「保存料、着色料不使用なので退色することがあります」。 味や香りにクセのある商品は、短所が長所に変わる不思議を訴え「存在感のある複雑な風味。なぜだかクセになります」。 原料高で個包装、少量化を余儀なくされた商品は、食べ残しの無駄がなくなるメリットを訴求し、「単身者向けの食べきりサイズ」。 就活生のことを笑えない苦肉のコピーであるが、特徴のある顔のアイドルほどファンは離れないというから、短所をキャラクターと捉え前向きに売り込んでいきたいと思う。 正露丸はくさいから効き、にんにくはくさいから旨いのである。
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