1105.椎茸とビタミンD(2023.1.30掲載)
以前、NHKスペシャル「病の起源第2集 骨と皮膚の病」で、人類の肌の多様性について見事な解説がなされていた。 かつて、アフリカの森に棲む毛むくじゃら猿人の肌は白かったのだが、およそ20万年前、森からサバンナに出た毛のない「ホモ・サピエンス」は、強烈な紫外線から身を守るため褐色の肌を獲得した。 しかし、およそ6万年前、アフリカを出て生息域を世界に広げようとした際、太陽光の弱い地域では褐色の肌がビタミンD合成に必要な紫外線をも遮断してしまうという問題が生じた(体内のコレステロールが紫外線によってビタミンDになる)。 そこで、北へ向かうにつれて肌の色を薄くし、紫外線との折り合いを付けた結果が、現在の肌の多様性につながっているというのだ。 長い時間をかけて獲得した多様性だけに、当然、短期間の移動には対応できない。 オーストラリアに移住したイギリス人が皮膚癌に悩まされ、イギリスに移住したインド人がビタミンD不足に陥る事例も紹介されていて、かなり合点な仕上がりの番組だった。 肌の色はさておき、食品メーカーとしての関心事はやはりビタミンDである。肌の老化や皮膚癌を恐れるあまり、いきおいUVケア商品に依存する昨今であるが、日本人の肌なりの紫外線を浴びなければビタミンD不足で骨がもろくなってしまう。カルシウムをいくら摂取しても、そこにビタミンDがなければカルシウムは吸収されないのだ。 そこで、おすすめは椎茸。わざわざ紫外線を浴びなくても、紫外線を浴びた椎茸(つまり天日干し)を摂取すればビタミンDは十分。 日本人の肌は日本の日差しに適した色になっているはずであり、ふつうに暮らしていれば皮膚癌のリスク無くビタミンDを合成できるはず。 幼時、今なら放送禁止用語の「黒んぼ大会」を目指して海辺で焼きまくった肌をながめながら、椎茸をつまむ日々なのである。
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