1121.ヒデキの味(2023.5.22掲載)
先日、ある金融機関の紹介で、大手カレーメーカーにだし素材をプレゼンする機会を得た。 これまで全く取引のない新規先。どうせムリムリなマッチング企画だろうから、担当者がイヤイヤ出てくるに違いない。 ならば捨て身のプレゼンで一発逆転を狙うべく、「リンゴの代わりにバナナ作戦」で突撃したのだった。 われら昭和世代にとって、カレーといえば「リンゴとハチミツとろ〜りとけてる」おいしさで、「ヒデキ感激〜」の味。そこで、リンゴでおいしくなるならバナナでもいいのではという仮説を立て、バナナ入りカレーを試作した。 意外とおいしい。人間の味覚を数値化できる「味覚センサー」という分析機器にかけると、旨味もコク味もかなり優位に出てる。これはいける。 はたしてプレゼンはややウケ。「ヒデキが感激したカレーのリンゴ、実はリンゴジュースの搾りかす。リンゴジュースが激減し、原料不足となっている今日ではバナナもありですね」との裏事情まで教えてくれた。必要なのは繊維質らしい。 その翌週、同じ金融機関が大手スパイスメーカーのアポを取ってきた。こちらも取引ゼロにつき、当たって砕けるしかない。 そこで「めんつゆにスパイスを入れるとおいしくなる」という仮説を立て、生姜、わさび、ねぎ、大根おろし、みょうがを加えたつゆを味覚センサーで検証してみた。 ところが仮説に反し、あらゆるスパイスがめんつゆの味を薄くするという結果が出てしまった。味覚センサーによると、わさびが最も顕著に味を薄くしてコク味がなくなってしまうのだ。 ということは、スパイスはつゆを「のどごしさわやか」な味に調整してくれているわけで、猛暑における食欲増進効果が検証できたことになる。この起死回生の新説を提示してなんとか切り抜けた。 新規先への突撃プレゼン。楽しみながらも当たって砕ける日々は続くのである。
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