1139.バブ(2023.10.2掲載)
約650億円といわれる入浴剤市場でトップを走るのが花王の「パブ」。 1930年発売の最古参、ツムラの「バスクリン」も健闘してはいるが2位。あやしい蛍光グリーンのお風呂より、炭酸ガス温浴効果のぬくもりの方が消費者に受けたということか。 このバブをヒントに、炭酸ガスを出しながら溶けていくという固形だしの素を開発してみた。 煮物を温浴効果でおいしくするというクスグリではなく、炭酸ガスを出した方が固形が崩れ、溶けやすくなるというまじめなコンセプトだ。 固形のサイズは、お菓子の「ペッツ」とか「ジューC」くらいの大きさ。バブのような大型サイズに固めるにはかなりの技術が必要で、花王の特許に抵触せずに大きく固めるのは今のところ不可能。 試作品第1号を携えて会議に乗り込んだ。 「炭酸ガスを出すために炭酸水素ナトリウムを配合します。ガス放出後に残ったナトリウムは、配合してあるグルタミン酸と結合してグルタミン酸ナトリウムになり、旨味成分として再生するのです」 完璧な前振り講釈。 「実際にお湯に溶かしてみます。…ほら、たった2分で完全に溶解。お鍋にポンとひとつまみ。スプーンいらずのだしの素」 ところが、「2分も待てない」「顆粒で十分」「クスリっぽい」などの罵声を浴び、撃沈した。 バブも花王の会議で4回ボツにされ、5回目で発売決定となったらしい。 ジェットバスもどきと勘違いする役員を説得するため、バブが溶けきったお湯とただのお湯に腕を3分間入れ、バブの方だけ腕が赤くなるパフォーマンスで商品化を勝ち取ったという。 会議でボツになるくらいのネタの方が、後で大化けする可能性を秘めているのだ。再び闘志が湧いてきてボツ蔵を覗いてみる。「食べられる本」「釘になるくぎ煮」「アイドルまんじゅう」等々。 そこには、ビッグヒット予備軍と辛酸を舐めた日々が眠っていたのである。
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