1138.ナノバブル(2023.9.25掲載)
バブル景気がうごめき始めた1987年夏。 この年の春に上京したばかりの私は、六本木にオープンしたディスコ「トゥーリア」を意気揚々と訪れたのだが、服装チェックであえなく入店を拒否されてしまった。 当時のディスコでよくあった「黒服」による入店審査である。 いま考えると滑稽な話だが、これが数少ないバブル時代の思い出なのだ。 そして、翌1988年1月5日、トゥーリアの吹き抜け2階天井から吊されていた大型照明が1階フロアに落下する大惨事が発生。巨人軍の桑田投手が数分前に店を出て難を逃れた話は有名である。 あれから36年。現在の日経平均株価の高値更新は、当時のバブル景気に似ているものの、低賃金のインフレ基調。だからバブルじゃない、だからはじけない。 ところで、科学の世界ではじけないバブルといえば、「マイクロバブル」や「ナノバブル」と呼ばれる小さな気泡である(直径はそれぞれ50マイクロメーター以下と1マイクロメーター以下)。 通常の気泡は水中を浮上し表面ではじけて消えるが、この気泡を小さくして髪の毛の半分以下のサイズにすると、ゆっくりと浮上しながらさらに縮小して水中で消滅する。 マイクロバブルは縮小するにつれて内部の圧力が急激に上昇し、消滅の瞬間に超高圧の環境を作り帯電もしている。これらの機能を活かして、さまざまな分野へ応用されているのだ。 貯水池の浄化、ノロウィルスの不活性化、血管造影剤、カキ養殖の生存率向上、食品の殺菌、船舶の摩擦抵抗低減等々。 1980年代後半のバブル景気は、1991年2月にあっけなく崩壊した。 もし、これから本物のバブル景気がやってくるなら、気泡を小さくしてゆっくり浮上する「ナノバブル」の技術を模倣するしかないと考えた次第である。
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