1152.ハレの日の鶏(2024.1.8掲載)
昭和40年代、田舎でもぼつぼつ「おたんじょうび会」なるものが出現し始めた。 そして、何人かのパーティーにお呼ばれし、窮屈な食事と不自然なゲーム大会(人生ゲームか野球盤)に疑問を感じ始めた私は、カジュアルなおたんじょうび会を企画したくなった。 「今度の日曜日ちょっとウチに来ない?」と、主旨を告げず8人に声をかけた。 しかし、カジュアルすぎて来てくれたのは2人。おまけに「言ってくれなきゃプレゼント買えないじゃん」と責められた。 だから、それ以降は変に気を遣うのをやめ、物欲のままにプレゼントを享受する人間になってしまった。小学3年の秋、人生唯一のおたんじょうび会の想い出である。 わが実家の場合、誕生日といえば「鶏の足」。アルミホイルを巻いてかぶりつくまるごとスタイルは、当時にしてゴージャス。 今では惣菜屋の片隅で安っぽい照りを放っている鶏の足だが、昔日の食卓で主役を張ったハレ食材の味が今も忘れられない。 日本能率協会総合研究所が実施した「家族イベント調査(首都圏男女600人対象)」によると、家族イベント登場メニューのベスト5は、にぎり寿司、刺身、フライドチキン、天ぷら、ちらし寿司だった。 鶏の足なんて、40位以内にもなかった。実家ではついこの間まで鶏の足だったぞ。 そして、実家でもう1回鶏の足が登場する日がある。 それはクリスマス。カトリック系の幼稚園に通っていた私は、生誕劇でたぶんヨゼフを演じ、先生に褒められた。その夜、ご褒美として鶏の足が食卓を飾って以来、クリスマスは鶏の足が定番になった。 ただ、当時のアルバムを引っ張り出してみても、ヨゼフを演じる私は見つからず、たぶんモミの木になっていたに違いないと思う今日この頃である。
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