1180.不条理なポジション(2024.7.22掲載)
若き日のサッカー部時代、少しゴールキーパーをかじった関係で、サッカーの試合を見るとどうしてもキーパーの動きに目がいってしまう。 ゴールキーパーほど不条理なポジションはない。 1回のミスも許されないプレッシャーに90分間耐え続けなければならないし、やっかいなことに、その重圧は同点より1点リードしている時の方が重い。 さりとて相手が弱く、シュートが飛んでこないような状況だとキーパーは活躍の場がなく、試合後の達成感もない。 守りきる存在感と、耐え抜く悦び。ドMで不条理でしょ。 そもそもサッカー自体、強いチームが勝つとは限らない不条理なスポーツであるから。 日韓W杯開催時、宮台真司氏は新聞紙上で「サッカーの本質は理不尽さだ」と説いていた。得点差は実力を反映せず、ボールを支配しても勝てないことがある理不尽さを「理不尽に満ちた民族の歴史」に重ね、韓国の盛り上がりに思いを馳せていた。 その通りである。さらに言えば、国家の歴史以前の問題として、農耕民族は敵味方入り乱れるスポーツが苦手。自分のテリトリーで土を耕し、種をまき、こつこつ水やりをして実りを待つ生き様に向いているのは野球であり、サッカーではない。 そう考えると、こつこつ守って評価されるゴールキーパーは少し農耕民族向きかもしれない。 さらに言えば、白いものを黒と言い、涼しい顔をして泥水をすするジャパニーズサラリーマンにも向いている。 そうか、あの日の部活のしごきが、今役に立っているのか。 夕陽に向かって走りたくなった今日この頃である。
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