1187.医薬品と食品の間(2024.9.16掲載)
製薬メーカーに勤務する知人が、こんなことを言っていた。 「今あるほとんどの医薬品は、100年前には世の中に存在していなかった」 なるほど、かつお節は400年前、納豆は700年前、味噌は1000年前からこの世にあったわけだから、医薬品=新薬と言ってもいいくらいの激しい世界に違いない。 そこで、医薬品と食品の商品開発を比べてみた。 まず開発費。医薬品は、20年近い歳月と数百億円という研究費をかける大プロジェクト。対する食品は、半年で数百万円。下町の惣菜屋にだって新商品は出せる。 次に研究開発の流れ。医薬品は、学術研究を突き詰めた先に商品の姿が見える。例えばアステラス製薬は、筑波山麓の土壌細菌が免疫抑制物質を生成することを発見。その物質を「プログラフ」という商品名で発売し、臓器移植になくてはならない医薬品に育て上げた。 対して食品は、基礎研究よりおいしさ追求。化学式は二の次でいいから、安くておいしいものを作ればいい。だから、就職活動で「大学で遺伝子を扱っています」てなアピールをするより、「料理には自信があります」と宣言する方が有利。 最後に特許。ジェネリック医薬品は、特許切れの商品を中小の製薬メーカーが安価に製造販売するものであるが、数百億円かけた新薬が20年後の特許切れで半値になるのは、先発メーカーにとって納得のいかないことだと思う。 対して食品は、商品寿命が短いから特許が申請されてから登録されるまでの5、6年の隙間をついて類似品を発売する。特許が成立する頃にはブームも終わって皆撤収。これはこれで先発メーカーは悲しい。 医薬品と食品。対極にある両業界。となると、機能性表示食品を謡うサプリメントはどうか。 医薬品と食品の間で、すべてのリスクを抱え込んだ悩めるカテゴリーなのではないだろうか。
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