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今から50年前、我が家にステレオがやってきた。 公務員の父が大枚をはたいたビクター4チャンネルステレオ。コテコテの和室の四隅にスピーカーがセットされ、電源が入った。 「雨が続くと仕事もせずに~キャベツばかりをかじってた~」 ピカピカのスピーカーから初めて流れてきた曲は、かぐや姫の「赤ちょうちん」。この2番の歌詞の印象が強烈で、喜ぶ父の声と南こうせつの哀しいボーカルが今でも耳に焼き付いて離れない。 仕事のない雨の日にキャベツで飢えをしのぐ労働者という設定を、当時小学5年生の私が理解していたかどうかは定かでないが。 実はこの年、1974年は「狂乱物価」という言葉が流行語になるほどのインフレに見舞われ、キャベツも前年の3~4倍。1玉400円になったという新聞記事の縮小版を見かけたことがある。「赤ちょうちん」の設定とは裏腹に、キャベツ高な時代だったらしい。 そして今年もキャベツ高。猛暑や豪雨という「狂乱気象」の影響で、やはり前年の3~4倍の1玉500円。白菜もレタスも大根も高値で、近所の鍋料理屋は主力をおでんに変えた。 野菜が高い年は、どうやらおでんが売れるらしい。ただし、コスト的に練り物とこんにゃく中心にはなるが…。 再び「赤ちょうちん」に耳を傾ける。 1番のサビは、「覚えてますか~寒い夜、赤ちょうちんに~誘われて、おでんをたくさん買いました~」。 50年前のキャベツ高、やはり人々はおでんに走ったようである。
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