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愛媛県の伊予市に花かつお産業が栄えたのは地の利や原料産地の問題ではなく、単にライバル社が隣接していたから。 だから、「自身を伸ばしてくれるライバルの存在は大事だ」と、食育授業で偉そうに説いている。 若者が食事にお金をかけなくなって久しく、スマホ代やゲーム代が食品のライバルになっているというのに…。 さらに、食品製造における原材料確保も、意外なライバルの出現におびえているのだ。 例えば、バイオエタノール。トウモロコシの発酵によるバイオエタノールの生産が歓迎されたものだから、トウモロコシが食品業界に回らなくなった。結果、トウモロコシでんぷんを原料とする調味料や糖類が高騰した。 また、シェールガスの掘削にグアーガムという増粘剤が使用されるようになり、価格が15倍に高騰。環境に配慮する米国では、天然の増粘剤を使用することを免罪符に掘削を進めたい思惑もある。エネルギー問題が、増粘剤を配合するアイスクリームやドレッシングの製造コストを上げてしまった。 思惑が外れたライバルもいる。加工食品の包装容器に使用されるポリビニルアルコールという資材は酸素を透過しない特性で品質保持に威力を発揮してきたのだが、ある時、液晶パネル業界から高値オファーを受け、食品業界からの決別を宣言してしまった。 しかし、リーマンショック以降、日本の液晶パネル産業は失速。出戻った食品業界でも居場所がなく、ポリビニルアルコールは苦戦を強いられている。 元来地味な食品業界であるが、シェールガスや液晶パネルなど、時流のキーワードに翻弄されることで変化に敏感になるというメリットもある。 いつの時代も、ライバルは必要なのである。
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