135.団塊消費力(2003.09.16掲載)
約800万人といわれる「団塊の世代」。そのサラリーマンたちが、数年後に定年退職を迎える。1947年から49年までに生まれた団塊の世代は、直前3年間に生まれた層より5割近く人口が多く、いつの時代も消費の原動力となってきた。その消費力が、定年で悠々自適の道楽生活に入るのだ。そこそこの退職金と、平均1224万円といわれる貯蓄はいずこへ消えるのか。 日経新聞の調査によると、引退後お金をかけたいものの1位は国内旅行。2位が住宅リフォームで3位が海外旅行となっていた。また、毎月1回は映画を見に出かけ、趣味に費やすお金も年間平均22万5千円から25万3千円に増やしたいとの回答。なかなかの消費力。これを各企業が放っておくはずもなく、シニア市場を取り込むさまざまな商品を準備して待ち構えている。 しかし、である。この消費には食品というキーワードが見当たらない。前述のお金をかけたいランキングの4位以下も、習い事、クルマ、パソコン、新居、別荘・・・。「食い道楽」とか「大好物満腹ツアー」などがあってもいいじゃないか。ワタオニの岡倉大吉みたいに小料理屋を出したいって人がいてもいいじゃないか。 このままだと食品業界は引退消費の恩恵とは無縁になってしまう。そんな大きなお世話と少しばかりの危機感を胸に、バリバリ団塊世代の私のいとこ(1948年生まれ)に取材を敢行した。 「わたしらは、明日食べるものがないという日々を過ごしてきました。2、3日何も食べないでいると、ヒトという動物がどういう行動に出るかということも知っています。だから、バブル全盛期もしろめしに味噌汁、接待の会席料理も残れば折詰め。食い道楽なんてとてもとても。いいですか、お金があるということは明日喰らう米が買えるということです。ひもじい思いをしなくてすむということです。これは幸せなことです。そんなわたしらが、引退したからといって大好物満腹ツアーに行くと思いますか。せいぜい復刻版の駄菓子をつまむ程度ですよ」 いとこと2人で郷里の裏山を駆けた日々を思い出した。 「これは食べられるイタドリ、これは食べられないハライタ。気を付けろよ」 イタドリに塩をふって食べた。何でも食べた時代だった。 団塊消費と食品需要、もう少し考えてみなければならないと思った。
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