134.白衣を捨てよ、町に出よう(2003.09.08掲載)
ヒット商品万三の法則に従い、発売後数年たっても存命する商品は1万個に3個。特に加工食品は栄枯盛衰が激しく、時間を重ねた技術者の労苦が報われることは少ない。 プロジェクトXだって、加工食品がテーマになったのはカップラーメンと醤油だけ(おまけに醤油は米国での販売戦略が主題だった)。革新的技術の新商品で名を残し、プロジェクトXで膳場アナとツーショット、なんてドリームは加工食品の場合ほとんど無理なのである。 加工食品は日常品。そして料理の延長線上にあるもの。だから、専門知識を持つ研究者でなくても、加工法を知る技術者でなくてもヒット商品の生みの親になれる。ここが他分野との違いかな。そういや、私の知人にも女子アナから食品メーカーの開発スタッフに転職した人がいたっけ。 そんな背景もあってか、最近のヒット商品サクセスストーリーで技術者が熱く語る姿を見ない。 例えば、アサヒ飲料の朝専用缶コーヒー「ワンダ モーニングショット」。清涼飲料ヒットの目安である年間販売量1千万ケースを7ヶ月で達成した同商品の開発リーダーは、31歳のマーケティング部副課長。缶コーヒーは4割の人が午前中に飲むという調査結果をもとに商品を企画し、ヒットにつなげたと鼻高々だが、この人の影に作業服の人たちの努力もあったはずなのに…。 例えば、サントリーの「燃焼系アミノ式」。CM効果もあって後発ながらこちらも年間1千万ケース達成確実だが、この商品の開発リーダーは、秘書課から転属した36歳の女性。合法的に燃焼系「生活」、アミノ式「健康法」を消費者に想起させる戦略が当たったと笑顔で語るその女性は、小じゃれたスーツ姿。アミノ酸の配合や味のバランスに苦労した白衣の研究者はいずこに…。 これらの事例を反面教師とするなら、我々研究者も負けじとマーケットに学び、ヒットの仕組みをプロデュースするしかないのである。小手先の新商品も当たれば儲かる勝てば官軍。サクセスストーリーなど後で考えればいい。 文系人間においしいところを持って行かれるのが嫌なら、研究者たち、白衣を捨てよ、町に出よう。
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