146.ドトる(2003.12.01掲載)
2001年、キリンビールの缶入りチューハイ「氷結果汁」が大ヒットし、その後もチューハイ市場のトップを独走している。成功の要因は、「氷結技術による果汁のフレッシュ感と、缶を開けるとダイヤパターンが浮き出てくる缶デザイン」とのメーカーコメントであるが、ライバルメーカーの開発部長は、「真のヒット要因は記憶の味だ」と語っていた。 記憶の味とは、キリンレモンの味。缶チューハイのヘビーユーザーたちが幼少の頃飲んだ、あの炭酸飲料の味を秘かに氷結果汁に配合しているのだという。だから違和感なく体になじむ。素直においしいと思う。 私も小中学校時代に透明炭酸飲料を爆飲していたが、ほとんど三ツ矢サイダーだった。だから、氷結果汁にはあまり反応しない。よって、三ツ矢サイダーを製造するアサヒビールの缶チューハイ、「旬果搾り」を試す予定である。 東京出張の度に、新しいビルの出現とメトロネットワークの広がりに驚かされる。六本木や汐留ばかりじゃない。毎月訪れる御徒町だって蠢いている。雨後の筍のごとくファーストフードとコーヒーショップは乱立し、宝石商の街から純喫茶を消した。 20年前、純喫茶のコーヒーしか知らなかった私は、上京してドトール180円コーヒーの味に衝撃を受けた。うまい。180円なのにうまい。純喫茶400円コーヒーの存在意義って何なのだろう。 ドトールコーヒーは1980年、同じように純喫茶に疑問を持った創業者によって1号店スタート。現在全国に956店舗、年商558億円で、2位のスターバックスコーヒー496店舗を大きく引き離している。ちなみに、ベローチェは138店舗、ルノアールは122店舗。 ところで、15年前に上京して同じようにドトールショックを受け、帰郷後150円コーヒーショップの営業を開始した知人がいた。資金のない彼は、箱バンの荷台を改良し、たこ焼き八ちゃんスタイルで街を流したのである。 結果は失敗。JR車内販売コーヒーのように、ポットからジャーっとコーヒーを出す安っぽさがいけなかったか。その後しばらくして我が街にもドトールが出店し、彼のフロンティア精神は人々の記憶から消えた。 現状に疑問を持ち、一念発起する。最先端に触れて感動し、起業する。動機は平等のはず。成否の分かれ目はどこにあるのか。 勝者ドトールはさらなる業態に挑戦している。セルフ式給油所を中心に、紙カップでサービスするコンパクト型店舗を展開。給油精算もドトール店内で済ませることが特徴らしい。また、エスプレッソ専門店のエクセルシオールカフェでは、エスプレッソを提供する「バリスタ」なる職業が脚光を浴びそうな気配。 また、ドトる機会が増えそうである。
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