145.記憶の味(2003.11.25掲載)
2001年、キリンビールの缶入りチューハイ「氷結果汁」が大ヒットし、その後もチューハイ市場のトップを独走している。成功の要因は、「氷結技術による果汁のフレッシュ感と、缶を開けるとダイヤパターンが浮き出てくる缶デザイン」とのメーカーコメントであるが、ライバルメーカーの開発部長は、「真のヒット要因は記憶の味だ」と語っていた。 記憶の味とは、キリンレモンの味。缶チューハイのヘビーユーザーたちが幼少の頃飲んだ、あの炭酸飲料の味を秘かに氷結果汁に配合しているのだという。だから違和感なく体になじむ。素直においしいと思う。 私も小中学校時代に透明炭酸飲料を爆飲していたが、ほとんど三ツ矢サイダーだった。だから、氷結果汁にはあまり反応しない。よって、三ツ矢サイダーを製造するアサヒビールの缶チューハイ、「旬果搾り」を試す予定である。 清涼飲料のアイテムが少なかった昭和40年代、キリンレモン、三ツ矢サイダー、リボンシトロン(サッポロビール)の三つどもえ商戦が展開されていた(武田食品のブラッシーもあったが)。最古参は、明治40年発売の三ツ矢サイダーで、次が明治42年発売のリボンシトロン。キリンレモンは昭和30年発売と歴史は浅い。 今も中高生をメインターゲットにしているこれら透明炭酸飲料は、むかし中高生だったドリンカーたちの記憶中枢からその味覚を呼び起こし、夜ごと缶チューハイへといざなうのだ。 ならばこういうのはどうだろう。グリコキャラメルの味をベースにしたキャラメルマキアート、ロバのパンの味をベースにしたエリザベスマフィン…。 幼時の食体験は絶対に消えないと言うが、記憶の味を利用してヒット商品を作るとは、缶チューハイの戦略はなかなか奥が深いのである。
|
column menu
|