148.ICタグ・モダンタイムズ(2003.12.15掲載)
いま流通業界のニュースで、ICタグという言葉を耳にしない日はない。 ICタグとは、1ミリ角以下という小さなチップを組み込んだ荷札(タグ)のことで、96ビットから128ビットの情報を記録できる次世代のバーコードである。 バーコードは13ケタの数字しか記録できない上に1枚1枚を直接バーコードリーダーで読み取る必要があるが、ICタグは電波で通信するため、一括同時読み取りが可能。何十個という商品を買い物かごに入れていても、1秒でレジ精算が可能なのだ。 現在、1枚20円前後と高価なため、商品が高額なアパレルメーカーの在庫管理などで活躍する程度であるが、近い将来、食品分野でもバーコードに代わる日が来るはずである。 2010年…。 スーパーで豆腐を手に取り携帯電話でICタグ情報を読み取る。原材料の産地、遺伝子組み換えの有無、生産工場概要、工場長の顔、出荷日などを確認。知らなきゃ普通に食べていた豆腐であるが、工場長の顔が気に入らない。他メーカーの商品と取り替える。 レジ通過1秒。楽だが正確に計算されているのか不安になり、レシートで1品1品確認。電子メールが本当に送られているかどうか、電話で確認した日々がよみがえる。 帰宅後、ICタグ読み取り装置の付いた冷蔵庫に収納。冷蔵庫の在庫リストが更新され、在庫品で調理可能なメニュー一覧も更新。ここで画面に警告表示。今日、賞味期限が切れる在庫品が10品あり、これでメニューを組めという。便利な機能だが、夜ごと「賞味期限瀬戸際ディナー」になりそうで、怖い。 翌朝は、生ゴミ収集日。ICタグの情報を消去して棄てなければ、我が家のゴミが読み取られてしまう。いつの世にもマニアな人がいるから要注意。読み取り機さえあれば、半透明ゴミ袋も黒色ゴミ袋も関係なし。 こんな風に革新的技術の普及前夜には、チャップリンの「モダンタイムズ」のごとき文明批判が展開される。よって本稿で先取り。 しかし、1本30円のバナナに本当にICタグが付くのか。現時点では疑問の声の方が大きいようである。
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