164.寿命30年(2004.4.12掲載)
企業の寿命は30年だとよく言われる。かつての花形、石炭産業も30年で斜陽となった。就職人気企業ランキングを見ても、30年前のベスト5は、現在ベスト10にすらない。 食品業界に目を向けてみると、外食産業の多くが30歳前後であることに気づく。すかいらーく、小僧寿し、ケンタッキーフライドチキン(34歳)。ミスタードーナツ、マクドナルド、ダンキンドーナツ(33歳)。モスバーガー(32歳)。デニーズ、サーティーワンアイスクリーム(30歳)。ほっかほっか亭(28歳)。 高度経済成長期のただ中にハレの日を演出し、モーレツ社員のランチタイムをサポートした外食の雄ばかりであるが、どうも息切れしそうな店が多い。ここでも寿命30年説があてはまるのか。 ふと、グリム童話の「寿命」という話を思い出した。 神様が世界を創り終わった時、全ての動物たちに30年の寿命を与えようとした。しかし、ロバは「重い荷を背負って生きるには長すぎる」と18年を削ってもらい、犬は「そんなにいつまでも走り回れない」と12年を減らし、猿もまた「陽気な馬鹿をやっているには長すぎる」と10年を返上したのである。 ところが人間は、「自分の家を建て田畑に実りをもたらし、カマドの火が燃え盛ってこれから暮らしを楽しもうという時に、なぜ死ななければならないのか」と嘆き、ロバの18年と犬の12年と猿の10年を加え、70年の寿命を受け取ったのだ。 だから人間は、最初の30年は人間の寿命を元気に生き仕事にも喜びを見出して生きる。ところがその後は、へこたれながら重い荷を背負う18年、走る元気のなくなった12年、そして間の抜けた10年を過ごすことになった、という話である。 外食産業のこれからは重い荷を背負う18年なのか。BSE、鶏インフルエンザ、アレルギー、環境ホルモン…。 確かに荷が重そうな道程である。
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