166.3倍体バナナ見ぃつけたっ(2004.4.30掲載)
ある調査会社が発表した「喜ばれるおみやげランキング東京編」によると、第1位に「東京ばな奈見ぃつけたっ」が鎮座していた。バナナの形をしたスポンジケーキの中にバナナカスタードクリームが入って8個入り1000円。特別うまいというわけではないが、1991年の発売以来売り上げを伸ばし、今や年間生産量5000万本。「鳩サブレー」「名菓ひよ子」などの老舗菓子を押しのけての1位である。 日本人はバナナに弱い。病気の時しかバナナを食べられなかった人。遠足の時バナナはおやつかどうか迷った人。バナナの叩き売りに吸い寄せられた人…。さっちゃんだけじゃない。みんなバナナが好きなんだ。 ところで、バナナは大学の農学部における育種学講義ネタとしても絶大なる人気を誇る。それは、何もしなくても種なしだから。 ふつう、植物が子孫を残すために生殖細胞を作る場合、減数分裂を起こし染色体の数が2組から1組になる。この生殖細胞が別の個体の生殖細胞と合体して染色体の数が元に戻る。両親の性質を受け継いだ新しい個体の誕生である(通常の個体は2倍体と呼ばれる)。 ところが、まれに染色体が2組のまま合体し、合計4組できてしまう場合がある(これは4倍体)。ここからがややこしい。4倍体が減数分裂した生殖細胞と、2倍体が減数分裂した生殖細胞が出会うと、2+1で3倍体ができる。3倍体は染色体のセット数が奇数だから正常な減数分裂が起こらない。だから生殖細胞ができず、種もない。ふだん食べているバナナは3倍体ということだ。 バナナは自然交配の末に偶然3倍体となった種なしのお手本なのである(ちなみに種なしスイカは人工的に3倍体をつくる)。 そんなお手本3倍体のバナナであるが、種がないことが欠点にもなる。種がないバナナを殖やすには株分けしかない。だから遺伝的に全く同じものだらけ。遺伝子の多様性がないということは病気に弱く、絶滅も考えられなくはない。 もし絶滅したら、また3倍体バナナを探そうではないか。 3倍体バナナ見ぃつけたっ。
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