203.食べごろ(2005.1.24掲載)
慶応大学の研究グループが、リンゴの食べごろが色の変化でわかる判定シートの開発に成功した。同グループは、リンゴの成熟に伴い増加する植物ホルモンの一種「エチレン」に注目し、エチレン濃度が高くなると黄色から青緑色に変化する色素を開発。1枚500円のシート状にして、贈答用リンゴへの同封需要を狙うのだという。 けど待てよ。元来リンゴが赤いのは、その色が食べごろマーカーとしての役割を担っているからではないのか。種子をできるだけ広範囲にばら撒くため、空を飛ぶ鳥からもわかる完熟の証として真紅の玉となるのではないのか。 人間だって動物である。リンゴを手に取り、ずっしりとしたその重みとお尻まで色づく実りの色を見れば、自然と食欲はわいてくる。リンゴだけではない。カキやオレンジやブドウをスーパーで買う時だって、色や重さや皮の薄さから甘味を吟味するではないか。そんな、動物の本能を退化させるような本末転倒商品に、500円の値が付くのだろうか。 食べごろといえば、おしゃれな携帯電話のデザインで有名になった深澤直人氏が、無意識を意識する工業デザインの一例として、紅茶ティーバッグの手に持つ部分を紅茶色のプラスチック製リングにし、飲みごろの色見本とするアイディアを紹介していた。カップのお湯が、リングと同じ色になるまでティーバッグを揺らせばいいという仕掛けだ。 これはいい。紅茶を入れる行為自体が楽しくなる。それに、そもそも紅茶の飲みごろなんて四畳半で番茶をすすって大きくなった私の本能にあるわけがなく、いくら五感を働かせても一生わからない感覚。だから見本があると助かる。 リンゴと紅茶。食べごろと飲みごろに関する二つの話題を紹介したが、食品メーカーが製造する加工食品にも食べごろはあるのか。めんつゆだと、製造後1年くらいが一番おいしいといわれている。けど、メーカーの消費者センターに問い合わせた時の答えは一つに決まっているのだ。 賞味期間内すべてが食べごろでございます。
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