207.おひとり様(2005.2.21掲載)
いま、40代独身者市場に注目が集まっている。1980年頃は5%前後の少数派で見向きもされなかったこの層であるが、1990年頃から急激に増殖を始め、時間とお金を自由に使える「おひとり様」マーケットとしての地位を確立した。 2000年の国勢調査によると40代前半の独身者は男性22.3%、女性16.0%。これが2020年になると、男性30.4%、女性25.3%になる予測である(国立社会保障・人口問題研究所発表)。4人に1人がシングルという時代がすぐそこまで近づいているのだ。 高度経済成長もオイルショックもバブルもバブル崩壊も経験してきた40代は消費の達人であり、お金の使い方を知っている。家族に気兼ねする必要がないおひとり様だから、こだわりには投資を惜しまない。だから売り手は期待する。70兆円といわれる食品産業も期待する。 しかし、である。40代独身者は食に関して質素である。「ゴージャスにうまいもの巡り」てなグルメ嗜好の中心は30代独身者か60代リタイア組であって、40代は意外と地味。日経流通新聞社のアンケートでも、40代独身者の75.3%が「食事は外食せず自炊」と回答している。なぜか。 これには、40代の食嗜好が定着した昭和40年頃の食事情が影響しているのではないか。戦後の食糧難時代を抜け、米、魚、野菜、大豆を中心とした純日本風の食事が安定して食べられるようになった昭和40年代。西洋の肉食文化やファーストフードに冒される前の団らん食卓で育った40代の舌が、地味な食生活を覚えているからではないか。 昨年、農林水産省が発表した「平成15年度食糧自給率レポート」で、昭和40年頃と現在の食生活を比較していた。肉の消費量は5倍、油は3倍に増え、米は2分の1に減った。食糧自給率も73%から40%に減った。 40代独身「おひとり様」。不惑の青春を謳歌しつつも、ヘルシーな日本食を忘れない最後の草食動物なのである。
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