208.かゆい所を見つけてあげる(2005.2.28掲載)
昨年の家電業界は、もうこれ以上の新商品は出ないと言われていたカテゴリーでヒットが続き、売上を伸ばした。その代表格が「斜めドラム式洗濯機」「薄型テレビ」「おしゃれな携帯電話」。それぞれ、洗う、見る、話すという基本的要求を超えた新機能を消費者にアピールし、大ヒットにつなげた。 もはや、「かゆい所に手が届く」的発想では市場を作ることはできない。「かゆい所を見つけてあげる」新商品が必要なのだ。 食品分野にも、かゆい所を見つけたヒット商品はある。昨年度、日経流通新聞賞の最優秀賞を受賞した水耕栽培野菜「エコ作」。今さら野菜なんてと思いがちだが、フリルアイス(レタスの一種)、サラダ水菜、ルッコラ、スプラウト(ブロッコリーの新芽)等のオシャレ品種に的を絞り、雑菌が少ないから日持ちがいい、無農薬で土が付いてないから外側の葉を捨てなくて済むという「かゆい所」を見つけてあげて、月産12万パックのヒットにつなげたのだ。 先日、この「エコ作」を製造する野菜工場「土浦グリーンハウス」を見学する機会があった。同社は、大手鉄鋼メーカーJFEスチールの関連会社だが、鉄の匂いなどみじんも感じさせない見事な緑の工場だった。 総ガラス張りの屋根の下、100メートルの流れるプールに野菜がぷかぷか浮かぶ。気温、水温、日照時間、風力、施肥濃度、炭酸ガス濃度などを細かくコンピューター制御し、収穫量を上げる。なんと、1年間に28回収穫する28毛作が可能らしい。 立派な工場に感心するだけではネタにならない。どこかに親会社の社風が潜んでいないかとキョロキョロ。すると、工場スタッフ自らが鉄の匂いを発してくれた。 「ご安全に」 スタッフの口から出たあいさつの言葉が「いらっしゃいませ」ではなく、鉄工場の常套句だったのだ。 ほんとうにかゆい所を見せてくれる工場だった。
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