209.怪しい果実(2005.3.07掲載)
平成6年頃、「国立病院の痩せる方法」なるダイエットメニューが出回ったことがあった。グレープフルーツとゆで卵を中心とした1週間分の食事メニューが決められていて、これを2回繰り返すと2週間で10kgの減量が可能。しかも、リバウンドがないという触れ込みだった(例えば1日目の朝食は、グレープフルーツ、ゆで卵1個、トースト1枚、コーヒー)。 出自は全く不明だが、私の手元にもメニュー表が届き、ダイエットに悩む親類縁者友人知人に紹介しまくった。結果、10人のうち8人が最高8kgの減量に成功。当時はけっこう感謝されたものだ。 ところが、挑戦中の1人がたまたま国立大学病院で診察を受けたことがきっかけで、全くのでたらめメニューであることが発覚する。 「即刻中止してください。このメニューでは、炭水化物とビタミンが必要量の4分の1しか摂れず危険です」 ドクターは激怒したらしい。痩せるんだけどなぁ。 そんな怪しいグレープフルーツであるが、最近、その匂いを嗅ぐと痩せるというデータが権威ある学会誌に紹介された。 ラットにグレープフルーツオイルの匂いを嗅がせたところ、交感神経の活動が上昇し、体温の上昇と脂肪の分解が確認できた。また、週3回15分の匂い刺激の結果、胃を支配する副交感神経の活動が低下して2週間後に顕著な体重減少が認められたのだという。 ん?2週間? さらに、女性モデルで実験を行ったところ、半分に切ったグレープフルーツの匂いを30分嗅がせると皮膚温度が3〜4度上昇したのである。 怪しいダイエットメニューの復活か。 ところで、グレープフルーツには、高血圧治療薬と一緒に摂ると血圧が下がりすぎてショック症状を起こすという危険な側面もあり、これは国立病院も認める公知の事実。 体温が上がったり血圧が下がったり。グレープフルーツはなんとも怪しい果物なのである。
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