298.最新フェロモン事情(2006.12.11掲載)
先日、NHKの医学系バラエティ番組「解体新ショウ」で、ヒトのフェロモンに関するおもしろい実験を紹介していた。 男性が2日間着用した体臭たっぷりのTシャツを数人分女性に嗅がせ、どのTシャツの匂いが好きかを答えさせた後、その男性とご対面という大胆な実験。 成立した「カップル」は、さまざま。意外性あり、サプライズあり。あぶれたり、むらがられたり。あぁ、街行くカップルを見て納得できなかった積年の謎が解けた。やっぱり恋愛は外見じゃない。フェロモンなんだ。 しかし、科学的に調べるとフェロモンというところまでは至っておらず、「女性は、ある遺伝子の違いがより大きい男性の体臭に引き寄せられる」というのが現時点での結論。この遺伝子のことを、MHC遺伝子と命名している。 MHCとは、主要組織適合抗原複合体(Major Histocompatibility Complex)の略称で、免疫細胞が自己と非自己を識別する際に使う目印。MHCが適合していないと臓器移植の際に拒絶反応が起こってしまう。このMHCをコードする遺伝子、つまり、MHC遺伝子が個人の体臭に関与することがわかってきたのだ。 女性は、自分と遠い遺伝子を嗅ぎ分ける。 そして、自分にない多様な遺伝子を獲得し、子孫繁栄につなげる。 だから、思春期の女性は遺伝的に近い父親の体臭をオヤジ臭いと嫌う。 そっか、本気で嫌われていたんじゃなかったんだ。血のつながりの証だったのね。 と、ひとりごちた香料メーカーの研究員は、このしくみを香水に生かせないかと企む。しかし、多様性の果ての匂いなのだから、スタンダードな商品化は難しい。 とすると、ターゲットのMHCを調べ、その遺伝子とできるだけ離れたMHCフレーバーをオーダーメイドする。そんな「勝負香水」ができる日が来るかもしれない。 香水で成功したら次は食品。「ついつい食べちゃうMHCスープ」を画策する今日この頃である。
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