322.芋と茶畑(2007.6.4掲載)
以前、ある大手外食チェーンの仕入担当者と同行して鹿児島に出向いたことがあったのだが、おもしろいことに、そのバイヤーの担当商品がかつお節と焼酎とお茶。鹿児島出張がこれほどまでにはまる日本人は他にいない、という感じだった。 まず、かつお節は鹿児島県が日本一。年間約2万8千トンの生産量でシェア70%。大型のカツオ船が入る漁港を整備したことが発展の一助となり、枕崎、山川というかつお節の二大産地を育んだ。 次にご存知芋焼酎。空前のブームは衰えを見せず、原料のサツマイモ「黄金千貫」は超品薄状態。鹿児島県のサツマイモシェアは約40%だが、25度の芋焼酎1.8リットルを製造するのに2.5kgのサツマイモが必要で、文字通り芋農家ほくほく。 そして、芋以上に好調なのがお茶。鹿児島県の生産量は約1万8千トンで静岡県の後塵を拝するシェア2位だが、平野部の畑と機械化された加工場のおかげで生産効率がものすごくいい。 ちなみに、芋とお茶は同じシラス台地で生産可能である。かつて、「水はけがよすぎて稲作不毛の貧しい土地」と社会科で習ったシラス台地であるが、芋と茶畑のおかげでカセグ台地になったのである。 ご機嫌よく、かつお節と焼酎とお茶を買い付けた件のバイヤー。これで温泉好きの右寄りだったら完璧な鹿児島フリークになれるのだが、アテンドが面倒なので特に話を振らなかった。 温泉は、15分間埋もれただけで血液がサラサラになり疲れが取れる指宿の「砂むし」。右は知覧の特攻記念館。 温泉は大歓迎だが、特攻記念館は悲しくて行くたびに涙が出てしまう。学芸員が社会科見学の小学生に語る特攻秘話を立ち聞きした時にゃ、もうボロボロ。「生きて帰還ばせんよう、お守りば置いていった。だから遺品にはお守りの多かね」。こんな感じの鹿児島弁が涙腺を砕いてくれるのだ。 ここで、平和ボケ日本の眠りを覚ます一句を奉献。 ほたる来て生きて知覧の石灯籠 芋と茶畑にほたるが舞う季節が、またやってくるのである。
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