328.なくてもいいもの(2007.7.17掲載)
もし、「日本をダメにした商品ランキング」というものがあるとしたら、携帯電話と家庭用ゲーム機は、間違いなく上位にランクされるであろう。 ケータイとゲーム機の功罪はここで述べるまでもないが、生まれた時からケータイがある暮らしって、どうなんだろう。平成生まれにとってケータイがないという仮定は、我々にとって固定電話がないのと同じ感覚なのだろうか。「ケータイは便利」というありがたい感覚はあるのだろうか。 哲学者の故池田晶子先生が、「便利さ」についてすばらしいコメントを残している。 「なければないですんでいたものが、なければすまなくなるのだから、便利とは不便なものだ」 なるほど。 なくてもいいもの→あったらいいもの→ないと困るもの。道具の進化で獲得した便利さは、「ないと不便」という逆説を孕んだ砂上の楼閣だったのか。 ならば早い段階で不便の芽を摘んでおこうということで、2007年上期のヒット商品番付からなくてもいいものを探してみた。 あるある。東前頭11枚目に、クラシエフーズ(旧カネボウフーズ)の板ガム「オトコ香る。」がある。体臭を消すというコンセプトが中年男性に受け、2ヶ月で4億円という驚異的な売上を達成した。 そこまでして体臭を消したいか。加齢臭は「身をわきまえよ」という老兵への警告信号なのだから、無理に隠そうとせず身を慎めばいいのだ。高齢者が怪しいガムを手放せない状況というのも、哀しいではないか。 あるある。西前頭14枚目に、「バナナケース」がある。バナナを持ち歩くための携帯ケースであるが、これ、いらないだろう。本来、果物の皮が中身を守るためのケースであり、それでつぶれたなら縁がなかったということなのだ。まさか、バナナケースがないと困る世の中にはならないと思うが、何が起こるかわからないので今のうちに引退願いたい。 便利なものは不便なもの。 とはいうものの、手放せないのが文明の利器。 まずは、なくてもいいものに頼らない生活を肝に銘じるのである。
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