401.腸の時代(2009.1.5掲載)
昨年は脳の時代だったような気がする。 脳科学者が深層心理や恋愛感情を絡めて脳の機能を解説し、メディアを賑わせた。アドレナリン、ドーパミンなどの専門的な神経伝達物質もメジャーになり、脳内メーカーや脳トレーニングなどのゲームもブームを巻き起こした。 これまで、心や魂の問題とされてきた性格や感情が徐々に物質レベルで説明できるようになり、自己啓発本や自己実現セミナーで脳の活性化法として利用されている。 将来的には喜怒哀楽すべての感情が化学物質のやりとりで説明できるようになり、そのコントロールもまた化学式で語られるに違いない。 とすると、ここらで腸のことも考えなければならないのではないか。 そもそも原始生命において、「摂取したものが栄養か毒か」「どう消化したらいいか」といった判断は、すべて腸がジャッジしていたのだ。その機能が進化の過程で発達し、脳や神経系、免疫系になったのである。 だから、今でも末梢神経の50%以上が腸に存在するし、幸福感を味わえるセロトニンという物質に至っては、90%以上が腸で活躍しているのだ。「腸(はらわた)が煮えくりかえる」「腹の虫が治まらない」「腹が黒い」などの感情や性格を表現する言葉に腸が多く使われているのも、脳と腸が一心同体だからである。 こうなると、食に関わる研究者の出番である。おいしい食事で効率よく栄養を摂り、感情のコントロールを指南する腸科学者の登場か。 前述の幸福物質セロトニンは、トリプトファンとビタミンB6を原料にして体内で合成される。 この両者を共に多く含むカツオを腹いっぱい食べ、お正月の団らんで腹から笑い、腹の立つ政治や不況に腹をくくって立ち向かう。 そんな2009年にしたいものである。
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