420.モスキート音とゴーヤ味(2009.5.18掲載)
先日、サントリーホールでNHK交響楽団の定期演奏会を聴いていた時、その異変に気づいた。 「高音が聞こえない」 世界最高レベルの音響を誇るホールが田舎の文化会館に成り下がり、心を動かすはずの弦の響きが胸に飛び込んでこなかった。 もちろん、問題は自分の耳にあった。 難聴系の疾病を疑い、翌日、朝一番で耳鼻科に飛び込んだ。 「これやばいですよ」 「先生、何かの病気ですか?」 「すごい耳垢です」 「えっ…」 ということで、30分かけて外科的耳掃除を敢行。驚異的な回復で10代の聴力が復活した。 とにかくよく聞こえる。隣人の携帯電話開閉時のバネ音が目の前で聞こえ、クルマのウインカーが倍音を奏でる。そして翌朝、二度寝の元凶だった優しい音の目覚まし時計が爆音となり、飛び起きた。これはすごい。 究極はモスキート音。公園にたむろして破壊行為を繰り返す若者退治のために開発された、不快なモスキート音。40代以上には聞こえないとされるこの17kHzの高周波音が、掃除した耳だとよく聞こえるのだ(人間の可聴域は20Hzから20kHz)。近々、足立区の公園で試運転されるらしいから、45歳だけど近づかないようにしようっと。 10代にしか聞こえない不快な音を流して、傍若無人な若者を排除する。 食の世界でこの天才的発想を生かすとすれば、苦味の利用ではないか。低年齢ほど苦味に敏感だから、居酒屋メニューをゴーヤづくしにすれば長時間粘って騒ぐ若者を退治できるかも。 モスキート音とゴーヤ味。こんなものを若者に浴びせるとは、トホホな時代になったものである。
|
column menu
|