422.魔法のカウンター(2009.6.1掲載)
東京ディズニーリゾートが好調らしい。 累計入場者数4億6366万人は上野動物園より1億人以上多く、年間入場者数2722万人はプロ野球の観客より500万人以上多い。また、園内の飲食、物品の売上高1550億円は、松坂屋名古屋店を320億円上回る。もちろん、六本木ヒルズをぶっちぎる6660億円という初期投資額もケタ違いであるが。 好調のキーワードとして「魔法」という言葉がよく使われる。 例えば、4月15日に開業した東京ディズニーランドの新アトラクション「モンスターズ・インク“ライド&ゴーシーク!”」。6年前から構想を練り、投資額約100億円。たった4分間のアトラクションに5時間並んでも終わった後に「また並びたい」という声が出るのだから、魔法にかかっているとしか言いようがない。 このキーワードは、外食産業にも当てはまる。つまり、「繁盛店=魔法にかかる店」ということなのだ。 年に1度の旬素材を3日前から仕込み、オーダーして10分後にはテーブルに並べる。そして、口に入れた瞬間、閉じこめた全てのうま味と大将の世界観が目の前ではじけ、客は魔法の虜になる。 ふつうの野菜をふつうに塩茹でしているだけなのに、経験したことのない素材感が広がる。どういう食材をどんなだしで仕上げたのか全くわからないが美味い。毎週通っても毎回違うおすすめ料理を出してくれて飽きない。苦手な食材が大好物に変わる…。 こんな魔法にかかる店なら毎日通ってもいい。ただ、味覚の個人差を考えると、ディズニーランドのアトラクションよりこのハードルは高いぞ。 ところで、ディズニーランドにカップルで行くと別れるというジンクスは、アトラクションの長い待ち時間にトークのネタが切れ、「つまらない彼氏」の烙印を押されてしまうことに由来する。やはり魔法は解けるものなのだ。 その点、外食繁盛店は安心。ネタが切れたら大将が粋なトークで助けてくれる。 だから、自信のない彼氏はカウンターに座りたがるのである。
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