440.千鳥亭お喜楽(2009.10.13掲載)
かなり遅ればせながらではあるが、落語にはまってしまった。 元来、やんちゃの至りで文化と教養に親しむ時期が他人より遅く、25歳で読書、30歳で映画、35歳でミュージカル、40歳で芝居にはまり、やっと45歳にして落語である。 学生時代、落語研究会に没頭する友人を笑った自分が情けない。彼は25年も先を行っていたのにね。この「失われた25年」を取り返すべく、寄席通いの日々なのである。 ただし、哀しいかな仕事に精を出す年齢で物事にはまると、それを愉しむと同時に、どうしても「仕事にプラスになるものはないか」と考えてしまう。もちろん、落語の中にもそれはある。 その1.食ネタ 落語には結構食ネタが多く、来歴や江戸風情、時代背景と食事情を楽しく学べる。いま何時だい、と時間を尋ねてそば屋の勘定をごまかす「時そば」。乞食にふぐの毒見をさせた後ふぐを平らげると、その乞食が、旦那方がぴんぴんしていなさるんでまたもらいに来ました、というオチの「ふぐ鍋」。貧しい下町の職人が、吉原一の花魁幾代太夫と夫婦になって餅屋を繁盛させる「幾代餅」等々。 その2.値頃感 たっぷり3時間楽しんで、寄席のお代はたったの2800円(鈴本演芸場の場合)。これは安い。1人の話芸が、1万円以上するお芝居と同じ満足感を与えてくれるのだ。これが値頃感、これが付加価値である。 その3.トーク この話芸を盗んでプレゼンに生かさない手はない。さりとて盗めるものでもないが…。とにかくうまい。前座レベルでもすごいのに、大トリになると話術+オーラでネタの世界に引き込まれてしまう。しかも、そのネタは当日その場で客の雰囲気を見て決めるというのだから、これまたすごい。だから、寄席のプログラムには演目が書かれていない(ネタが始まると自分のプログラムに演目を書き込む通人を多く見かける)。 こんな技に触れていると自分でも落語をやりたくなり、現在特訓中。件の友人をバカにした自分が、四半世紀遅れの落研入部。 とりあえず、「千鳥亭お喜楽」を名乗らせていただきやす。
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