459.暦(2010.3.1掲載)
今年は57年ぶりに旧正月とバレンタインデーが重なっているから故郷は大盛り上がりだ、と知人の中国人が上気していた。 日本以外の多くの東アジア諸国は旧暦で新年を祝う。旧暦を捨てた日本にいるとぴんとこないが、旧正月の前後1週間は対中、対韓ビジネスは開店休業状態になるのだ。 捨てたとはいえ、我が故郷にも旧暦で盛り上がる行事がひとつだけある。商売繁盛を祈願する椿神社の祭礼がそれで、旧暦の1月7〜9日と決まっている。だから新暦だと毎年変動し、今年は2月20〜22日。このお祭りが終わると決まって気候が暖かくなるから、旧暦はすごいと毎年感心するのである。 江戸文化に詳しい石川英輔氏の著作で旧暦を勉強した。 旧暦は1ヶ月の長さを月の運行で決める。新月の日を1日、満月を15日とするが、月の運行はかなり不規則で、30日の月があったり29日の月があったりする。 また、月齢による1ヶ月は1年の12分の1より約11日短いため、平均して32〜33ヶ月に1回は閏月を入れて1年を13ヶ月にしなければならない。閏2月とか閏7月とかが入るわけで、冬が長くなったり夏が長くなったりする年があるのだ。 ちなみに、2009年には閏5月があった。新緑の期間が長く、過ごしやすい年だった。 旧暦には太陽の動きも絡んでいる。いわゆる二十四節気である。四季の始まりを立春、立夏、立秋、立冬とし、それぞれの間を6等分して啓蟄、春分、清明、夏至、小暑、白露、冬至、大寒など、粋なことばの節気が巡ってくるのだ。 夜が暗かった時代に便利だった月の暦。 農業が主な糧だった時代に便利だった太陽の暦。 旧暦は、動物としての人間にぴったりの目盛りなのだ。 筆を置いて地下鉄に乗った。月も太陽も見えない地下鉄の車中だが、サラリーマンの混み具合や疲労感で大体の時間はわかる。 これも暦のひとつかと思った。 ================================================================ 2010年に閏月はありません。
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