510.啓蟄(2011.3.7掲載)
昨日3月6日は虫もうごめく「啓蟄」だった。何となく春の感じがそわそわする二十四節気にいざなわれ、旧暦について学んでみた。 旧暦は太陰太陽暦とも呼ばれ、日付は月齢、二十四節気は太陽を基準として運用する。つまり、潮の満ち引きが分かる漁業向けの太陰暦と、植物の生長と四季に合致する農業向けの太陽暦を都合よく組み合わせた暦なのである。 まず太陰暦は、月の見えない日を朔(ついたち)、満月の日を15日とする。慣れると月の形を見ただけで日付がわかるし、1日と15日頃が大潮だから出漁の目安にもなる。 しかし、月齢の1ヶ月は約29.5日で、12倍しても354日にしかならない。つまり、毎年11日ずつずれて約16年毎に季節が反転してしまう。これを補正するため、19年に7回閏月を設けて1年を13ヶ月にするのだ。次の閏月は2012年閏3月。来年は今頃の気候が長く続くということか。 いくら補正するとはいえ11日もずれたのでは農業用には使えない。そこで、太陽の軌道を24等分して15度おきに節気を配し、立春に始まり大寒で終わる二十四節気を農耕の目安としたのである。 啓蟄の次は3月21日の春分。そして、4月5日の清明、4月20日の穀雨、5月6日の立夏と続く。なんと美しい言葉だろう。 話は飛ぶが、3月の英語表記Marchは、戦いと農耕の神Marsに由来する。古代ローマでは3月から農耕が始まり、ここが暦の起点となった。なので、3月を1番目の月として10、11、12月がそれぞれ8、9、10番目の月となった。 October、November、December。化学を修めた者なら化合物の炭素数を表現するOctane(8個)、Nonane(9個)、Decane(10個)との関係に気づくはず。 農業、漁業から有機化学まで。暦がつなぐ縁はなかなか奥が深いのである。 ================================================================ 旧暦情報の出典は、小学館「落語昭和の名人完結編1、2」です。
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