529.水とうちわと砂糖と塩(2011.7.18掲載)
今年の東京はことのほか暑い。 特に電車がキツイ。停止したエスカレーターを横目に見やり、階段を駆け上がった果ての「節電電車」。昨年までの極楽超冷房車両とは真逆の熱気に、汗が倍増するのだ。 短パンとTシャツならまだなんとかなるが、スーツにこもる熱気はどうしようもない。最近、車中での「急病人発生で遅延」という告知が急増したような気がするが、節電の影響で車両内熱中症が増えたのではないか。 熱中症というと夏場のスポーツの危険性が想起されるが、日本救急医学会がまとめたところによると、意識障害を伴うような重度の熱中症は、圧倒的に日常生活で発症する事例が多いのだ。スーツで暑い電車に乗るのは危険だ。 ちなみに、熱中症の応急措置は「冷却」と「補液」である。 高校時代のサッカー部夏合宿。日射病に倒れた部員にバケツで水をかけてうちわであおぎ、復活したらゲータレード。荒療治だが、まさに冷却と補液だった。 水+送風は、医療専門誌でも簡便性と冷却効果の両面で推奨されている王道の治療法。アイスノンなどの保冷剤は冷却効果が弱いし、冷水浸漬は簡便性に難がある。 また、理想的な補液飲料として大塚製薬の経口補水液「OS−1」が市販されているが、手作りも可能だ。水1リットルに砂糖40gと塩3g。これでいい。 で、作ってみた。少し砂糖が溶けにくいが、すぐにできた。 で、飲んでみた。幼時、餌として脱脂綿に染み込ませてカブトムシに与えていた砂糖水を思い出した。この手作り経口補水液が、節電時代の新たな夏の味になるかもしれない。 水とうちわと砂糖と塩。 熱中症のリスクが日常生活に潜んでいるのであれば、治療法もまた、日常でなければならないのである。 ================================================================ 熱中症情報の出典は、日経メディカル2011年7月号です。
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