530.道楽のシナリオ(2011.7.25掲載)
第19回読売演劇大賞の中間選考会が開かれ、2011年上半期の作品賞候補ベスト5が発表された。公演日順に「大人は、かく戦えり」「国民の映画」「レ・ミゼラブル」「散歩する侵略者」「雨」である。 で、うれしいことに、このうちの3本を観劇していたのだ(国民の映画、レミゼ、雨)。 芝居道楽十余年にして初めての経験。遅咲きマニアの舞台感性が評論家先生の審美眼にシンクロしつつあるかと思うと、一人にんまり下期の公演チケット争奪に力が入る。 この悦び、食い道楽にも共通するものがある。行ったことのある繁盛店にミシュランの星が付くと、「知ってるよ、その店の味」と思わず自慢したくなるあの感覚である。 そして、食い道楽の場合、次に起こす行動はチケット予約ではなく、「まだメジャーになっていない名店の発掘」と「名店の味を手料理で再現」。ただ、どちらも泥沼ではあるが。 世の中にメジャーになっていない名店などいくらでも存在するわけだし、自分で流行の味が再現できるくらいなら誰も行列には並ばない。 それでも食いしん坊たちはせっせと路地裏を巡り、休日にはキッチンに立つ。 ん?とすると、芝居道楽の次の行動も同じパターンかな。「まだメジャーになっていない役者の発掘」と「自身が役者に挑戦」。 たしかに、小生の周りにもいた。寄席通いの果てに噺家に弟子入りし、大学を中退した先輩と、芝居小屋巡りが高じて劇団に入団し、専門学校を中退した後輩が。 さすがに四十代後半でそんな冒険をする勇気はないが、巷でよく耳にする「脱サラして○○」的な話は、最初は軽い趣味の世界だったに違いない。 芝居や料理に限らず、ゴルフでも釣りでも絵画でも写真でも、道楽のシナリオにはくれぐれも注意しなければならないのである。 ================================================================ 読売演劇大賞情報の出典は、2011年7月15日付読売新聞朝刊です。
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