555.大根焼酎(2012.2.6掲載)
本コラムの前号「塩麹」で麹の酵素を活用する理科研究をおすすめしたが、その直後、麹の酵素に頼らず、自ら調整した桜島大根の酵素で焼酎を作るスゴイ理科研究に取り組んでいる学校の存在を知った。 それは、鹿児島県立錦江湾高校。地元名産の桜島大根から取り出した酵素で、桜島大根自身のデンプンを糖化し、そこに酵母を作用させて大根焼酎を作り出したのだ。 こういう学生の理科研究の場合、いくら内容が優れていても、着眼点がおもしろくなければ賞は取れない。錦江湾高校の場合、その着眼点が桜島大根なのだから文句なし。 そして、着眼点と同様に重視される「高校生らしい発想」もこの研究には含まれていた。桜島大根が実験中に腐敗してしまうという問題点を、切り干し大根の使用で克服したのだ(もちろん切り干し大根も手作り)。 高価な設備や実験器具に頼るのではなく、日本の伝統的な保存食である切り干し大根の利用をひらめいた段階で、この研究の成功は約束されていたといえる。 審査員はこういう素朴な工夫にすごく弱い。 そこで、さらなる高みを目指すために、受けるテレビドラマの3要素を理科研究に取り入れてみてはどうだろうか。ドラマ3要素とは、「主人公にライバルがいる」「主人公がピンチに陥る」「謎の人物が登場する」。 例えば、桜島大根のライバルとして北海道産のじゃがいもを登場させる。そして、両者が味を競う過程で桜島大根が腐敗するというピンチを、謎の体育教官が提案した「切り干し大根を使う」というアイディアで切り抜けるのだ。 ラストは、その体育教官が完成した大根焼酎を飲んで涙するという大団円でどうだろう。 ドラマチックな理科研究になること間違いなしである。 ================================================================ 大根焼酎情報の出典は、化学と生物2011年8月号です。
|
column menu
|