556.君は国境を知っているか(2012.2.13掲載)
昨年7月、日本青年会議所が全国の高校生約400人を対象に、領土、領海に関する意識調査を実施した。 「この白地図に、隣国との境界線を引いて下さい」 用意された白地図は、北方領土、日本海、東シナ海の3枚。そこに国境線を引いてもらうのだが、全問正解者はわずか7人。最も正解者の多かった東シナ海でも105人だった。 恥ずかしながら、小生も北方の境界を間違えてしまった。「国境は隣接する各地域の問題ではなく、国の問題」という同会議所小田氏の嘆きが胸に痛かった。確かに、隣家の落ち葉が自宅の裏庭を汚したとしたら、当然それは裏庭の問題ではなく、家と家の問題だ。 北方領土、尖閣諸島、竹島が報道で取り上げられる度に我々は熱くなり日本人を意識するが、もっと冷静に歴史を学び、そこに境界線が引かれた背景を知らなければ何も変わらないと思う。 教材はいくらでもある。例えば2月7日は「北方領土の日」であるが、この日は1855年(安政元年)に、静岡県下田市で日魯通好条約が調印された日なのだ。本条約は日露間に通商を開くとともに、平和的な話し合いによって両国の国境を択捉島とウルップ島の間と定めたもので、これにより択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の北方四島が日本の領土として確定したのである。 なぜロシアはこの約束を反故にしたのか。 くしくも今年はオリンピックイヤーであり、日の丸を意識する機会は多いが、スポーツバーで絶叫する日の丸ペイント君、真のナショナリズムは自国を知ることから始まるのだ。 できることなら件の白地図を携帯し、ポーズだけの愛国者を糾したい。 君は国境を知っているか、と。 ================================================================ 領土問題情報の出典は、「WEDGE」2012年1月号です。
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