561.処方せん食堂(2012.3.19掲載)
医薬分業という国策で急増した調剤薬局のせいで、通院時の薬の受け取りが不便極まりない状況になった。 病院で処方せんをもらい、外に出て調剤薬局でまたお金を払う。パチンコ屋の換金システムを連想してしまうこの制度であるが、薬剤師の技術料が約3割オンされて薬代が高くなっている分、パチンコ屋よりたちが悪い。 もちろん、分業以前の病院の薬代にも技術料は乗っていたが、薬価差益で儲けていたからそれはわずか。しかし、一時23%あった差益が8%台に下がってしまった結果、病院は1万品目以上になる在庫リスクを考慮し、薬での収入を放棄したのだ。 1980年に3.9%だった調剤薬局処方率は2009年に62%まで上昇。その市場規模6兆円は、百貨店業界の売上総額に匹敵する。 ならば食品業界もこの制度に倣い、処方せん食堂に挑戦してみてはどうだろうか。「丸の内タニタ食堂」が大ブレイクするくらいだから、医師が処方するメニューを管理栄養士が調理して提供すれば、医食同源ビジネスとしては申し分ない企画だと思う。 糖尿病専門医が低カロリー食を処方したり、眼科医がブルーベリーデザートを処方したり、皮膚科医がドクダミスープを処方したり…。 そして、精神科医が処方するメニューを想像してみた。リラックスする食事、怒りが鎮まる食事、前向きになる食事などあればおもしろいが、「温めた石を布に包んで出す」という趣向はどうだろうか。 かつて、禅寺の修行僧は温めた石を懐に入れ、寒さや空腹をしのいだという。心を病んだ現代の世迷い人が石の功徳にあやかり、「懐石料理」の語源に思いを馳せれば、案外悩みが晴れるかもしれない。 そして、東京丸の内朝8時30分。タニタ食堂の整理券を入手。いざ、処方せん食堂開業のための市場調査開始なのである。 ================================================================ 医薬分業情報の出典は、「WEDGE」2012年3月号です。
|
column menu
|